政幸

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不動産任意売却に当たって(チェック項目)

0 不動産任売だけなら業者へ?では、その他債務整理を伴う場合はどうか。  皆さんが、所有の自宅等の不動産を任意売却する事情は、さまざまです。  単純に、当該不動産を任意売却して、ローン残高分の弁済に充てるだけであれば、弁護 士に依頼してまで手間をかける必要はないかもしれません。  しかし、多くの場合、そのような単純な事情による必要のケースは少なく、住宅ローン の残高債務が残ったり、そのほかの債務整理の必要もあるケースがほとんどではないでし ょうか。  このような場合、やはり弁護士の交渉力に依拠して、経済生活の再建を図ることが一般 的です。ご自身で、この交渉等を行っても債権者は債務整理に応じてくれなかったり、債 務者である皆さんにとって過酷で不利益な条件を提示してくることも考えられます。  1 基礎知識 (1) 任意売却専門業者へ依頼したときの仲介手数料   売買価格の3%+60,000円+消費税が上限例:マンションが2000万円で売れた場合  (2000万×0.03+60,000)×1.08=71万2800円が仲介手数料   この仲介手数料は、売却金額から控除される。 (2) このほか、実費等  ・手続のため必要な住民票、印鑑証明、書類郵送料 (・引越費用(任意売却による捻出いかん))  ・滞納マンション管理費、修繕積立金など  ・固定資産税滞納分 (3) 任意売却にかかる費用(売主の持ち出し費用はないのが原則)2 抵当権者(住宅ローン債権者)に対して(主として銀行など) (1) 弁護士が受任して債務整理する場合の手順   受任通知、銀行担当者との折衝   月々のローン支払いについて(ストップいかん) (2) 任意売却のための不動産業者との折衝   専任媒介か一般媒介か   すぐに売れるとは限らない   業者買取だと安く買いたたかれる (3) 上記(1)と(2)の兼ね合い状況についての調整3 本件不動産が、債権者による差押えとそれに続く競売にかかっているかどうか  もし、競売開始決定がされているようなら、急いで当該債権者と任意売却の交渉をし て、裁判所の競売手続の進行を待ってもらう(競売手続の進行状況にもよります)。  任意売却の目途が立ったら、債権者には、競売の申立てを取り下げてもらう(取下げの 期限は、不動産執行の手続上、売却許可決定がなされるまで)。4 税金等の滞納による本件不動産に対する差押え(滞納処分)の有無5 自宅に付いている火災保険等(解約、更新いかん)6 住宅ローンの引落口座 (1) 口座を一旦ゼロにして動きがないようにする (2) 電気・ガス・水道・電話料金などの引落が一緒の場合には、それらを他の銀行の口座  に切り替える7 弁護士に事件処理依頼をする弁護士報酬(着手金等)の用意以上のようなチェック項目に気を付ける必要があります(備忘録)

固定残業代の有効性

 企業が労働者との関係で予め取り決めた労働の対価としての給与支給条件に、月の一定労働時間分に相当する固定残業代が含まれていると主張する場合がよくあります。 例えば、月当たり時間外労働分として20時間、同じく月当たり深夜手当分として10時間などといった形で取り決めた場合です。 このような労使間の取り決めが、裁判上に持ち出された場合、有効と認められるには、どのような要件をクリアーしていなければならないのか。 一般的には、(1)明確区分性、(2)対価性、(3)差額分支払の合意の3つが挙げられます。(3)は、当然のことなので、むしろ、(1)と(2)がポイントになると考えられます。1 明確区分性とは  定額残業代として支給することを決めている賃金分が、他の給与(基本給や業績給など)と区別して取り決められていること、すなわち、通常の労働時間の賃金部分と割増賃金に当たる部分との判別が可能であること  代表的な、裁判例としては、テックジャパン事件(最高裁H24.3.8)、医療法人 社団康心会事件(最高裁H29.7.7)が有名です。  これらの裁判例は、いずれも、使用者側が主張する固定残業代を割増賃金としては認めなかった事案です。  具体的には、 「労働者に支払われる基本給や諸手当(以下「基本給等」という。)にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに労基法37条に反するものではない。」 「割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては、・・・労働契約における基本給等の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要」 と判示している。2 対価性とは  固定残業代とされる部分が、それに対応する労働の対価としての実質を有すること  代表的な、裁判例としては、日本ケミカル事件(最高裁H30.7.19)は、原審(東京高裁)が、「いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは、定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払を請求することができる仕組み(発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み)が備わっており、これらの仕組みが雇用主により誠実に実行されているほか、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であり、その他法定の時間外手当の不払や長時間労働による健康状態の悪化など労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合に限られる。」として、労働者の賃金及び付加金の請求を一部認容したのに対し、 「雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである」 と判示し、上記高裁判断部分を一部破棄して差し戻している。3 分析  固定残業代としての明確区分性及び対価性を満たすためには、労使間の労働契約の内容として、固定残業代がしっかり位置付けられていることが大切 具体的には、① 就業規則あるいはその一部としての賃金規則(給与規程)に、月の何時間に相当する分が当該月当たりのいくらとして、賃金支給されることになっているかが明確であること、② 契約書あるいは、使用者(職制)からの説明等により、上記のような労働条件が明示されていること➂ 実際に勤務した労働者が、給与明細などにより、当月に、自分が勤務した状況に照らして固定残業代として何時間分をいくら支給されているか、これを超過して勤務した場合に、その分はちゃんと超過分として時間外賃金が支払われているかどうか分かる程度のものであること以上が、キーポイントになるものと考えられる。  企業である使用者は、固定残業代に相当する部分を、さまざまな形で給与の中で支給している実態が見受けられる。  例えば、「みなし残業代」とか「勤務手当」等・・・、さらには、基本給の中に含めて支給しているものも見受けられる。  いずれにしても、労働者に「何時間分の固定残業代いくら」という形で分かるものが求められているものというべきであり、裁判で争われたときに、しっかり説明できるような給与体系が構築されていてしかるべきである。  そのためにも、上記労働契約の内容となる規則あるいは契約書ないし労働条件通知書には、これらを明示しておくことが望ましい。  その際には、取り決めの中で、これら所定の固定時間(例えば20時間)を超過して勤務した場合には、その超過分は、別途、割増賃金として支給される旨の明記もしっかりすべきである。                          以上(文責 弁護士 福島政幸)  

離婚に伴う慰謝料と不貞行為の相手方

 これまで、不貞行為の相手方に対して、離婚に伴う慰謝料を請求できるかどうかについては、実務上明確ではなかった。 最近、最高裁平成31年2月19日の判決が出て、「夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対し、特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできない」という裁判例が確立したものといえる。以下、解説する。1 事案  被上告人(X)とその妻Aは夫婦であった。Aは上告人Yと不貞行為に及び、XがYに対し、これにより離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料等の支払いを求めた。   元夫婦  X===A・・・・との不貞行為の相手方Y  X-----------→Yに損害賠償請求2 事実経過  XとA、平成6年3月結婚、 同年8月長男、H7.10月長女出生  X、仕事のため帰宅しないこと多く、  AがYの勤務先会社に入社、H20.12月以降性交渉ない状態  Y、H20.12頃、Aと知り合い、H21.6月以降Aと不貞行為  X、H22.5月頃、不貞関係知る。  A、その頃、Yとの不貞関係解消  A、H26.4月頃、長女大学進学機に、Xと別居、その後半年間、Xのもと帰ることも、Xに連絡取ることもなかった  X、H26.11月頃、横浜家庭裁判所川崎支部に、A相手に夫婦関係調整の調停申立  H27.2.25 調停離婚成立3 原審(東京高裁)の判断  YとAとの不貞行為によりXとAとの婚姻関係が破綻して離婚するに至ったのであるから、Yは、両者を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、Xは、Yに対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができるとして、XのYへの損害賠償請求を一部認容した。4 最高裁の判断  夫婦の一方は、他方に対し、その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ、  本件は、夫婦ではなく、夫婦の一方が、他方と不貞関係にあった第三者に対して、離婚に伴う慰謝料を請求するもの  離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄  夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、  直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない  第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻環形に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる  本件についてみると、Yは、Xの妻であったAと不貞行為に及んだものであるが、これが発覚した頃にAとの不貞関係は解消されており、離婚成立までの間に上記特段の事情があったことはうかがわれない。したがって、Xは、Yに対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができないというべきである。5 解説  着目すべきは、上記4の判断の傍線箇所(1) 夫婦の一方(X)は、不貞行為あれば、不貞行為の他方(A)に、離婚による慰謝料を 理由とする損害賠償請求が可能(2) Xは、Yに、不貞行為を理由とする不法行為責任(不貞慰謝料の損害賠償責任)を負う 場合がある(3) Yは、Xに対し、直ちには、離婚慰謝料の責任を負うことはない(4) 特段の事情として、Yが意図してXとAとの間の婚姻関係に不当干渉(不貞行為など) した結果、XA間夫婦が離婚になったと評価できる場合には、離婚慰謝料成立余地  以上からは、① Xは、不貞行為を理由とする不法行為による損害賠償(不貞慰謝料)をAとYに請求可 (この場合、AとYは、Xに対し、共同不法行為者となり、連帯責任を負う)② この不法行為による請求の消滅時効は、Xが不貞行為の存在及び相手方を知ったときか ら3年間➂ Xは、離婚時にAに不貞を理由とする離婚請求(民法770条1項1号)及び離婚慰謝 料の請求が可能④ Xは、本件事案のように不貞関係の事実終了後、(3年以上経っているYに対し、)離 婚慰謝料を請求することは、原則としてできない。⑤ ただし、XがYについて、XへのAとの婚姻関係解消を狙って不貞関係を離婚成立時前 までに続けたなどの特段の事情があれば、離婚慰謝料を請求できる余地ありということになると思われます。                                   以上 

相続法改正(その4)(便利な自筆証書遺言)

1 新制度の実施について (1) 新しい自筆証書遺言については、平成31年1月には既に施行されていますので、現  行法として現在機能していることになります。   ただし、施行日(平成31年1月13日)以前になされたもの(自筆証書遺言の作  成)は対象外ということになります。 (2) 自筆証書遺言の遺言書の保管制度は、平成32年7月10日から施行されます。2 新しい自筆証書遺言とは  自筆証書遺言は、従来の自筆証書遺言と同様に、全文、日付及び氏名を自書し、これに 印を押す必要があります。・・・・・ここまでは従来どおり  改正点は、財産目録にあります。  従来は、この目録も自書することが求められていました。反対に言えば、自書でないと 遺言としての効力が生じないということでした。  しかし、新しい自筆証書遺言では、財産目録については、自書する必要がなく、目録自 体は、ワープロなどのパソコン入力によるものや、預貯金通帳のコピーの添付、不動産登 記事項証明書の写しを用いることなどが可能となったことになります。  その際、遺言者は、その目録の各葉(各頁ということ)に署名し、印を押すことが求め られています。  この改正により、遺言者がたくさんの不動産や多岐にわたる種類の預貯金、株式、有価 証券、その他の財産を有している場合に、いちいちそれら各財産の内容を特定するために 自書しなければならない負担が軽減されたことになります。特に不動産の登記情報を逐一 自書しなければならない苦労を考えた場合、だいぶ楽になったと言えるでしょう。3 遺言書の保管制度とは (1) 自筆証書遺言を作成した遺言者は、法務局に保管を申請できます。 (2) 効用(公正証書遺言に代わり、安く手間なく公のものとして保管可能)   これにより、従来のように遺言をいちいち公証人役場で公正証書にしなくても、公の  ものとして自筆証書遺言を機能させることができるわけです。   公正証書遺言を作成するには、公証人に手数料を支払わなければならないのと、公証  人役場で、遺言者の遺言能力の確認や、遺言内容の読み合わせ等による確認が慎重にな  された上で、遺言者がその公正証書遺言を保管するほか、当該公証人役場の公証人にお  いても当該公正証書遺言を保管してくれ、改ざんや偽造の心配のない公のものとして機  能しています。そして、公正証書遺言には、家庭裁判所の検認を経る必要がないメリッ  トもあります。4 保管制度の具体的内容(効用) (1) 遺言者にとってのメリット   今回の自筆証書遺言の保管制度では、  ・ 遺言者みずからが法務局に出頭して、  ・ 遺言保管官(法務局職員)に、  ・ 自筆証書遺言(無封のものに限るとされていることに注意)の保管を、  申請できる。  ・ どこの法務局へ保管申請できるか(管轄)    遺言者の住所、本籍、又は、遺言者が所有する不動産の所在地を管轄するいずれか   の法務局 (2) 遺言者保管官は   遺言書の画像情報、遺言者の氏名・生年月日・住所・本籍、遺言書の作成年月日など  を、遺言書保管ファイルに記録して管理 (3) 相続人等の関係相続人等は  ・ 遺言者の死亡後に  ・ 遺言書情報証明書の交付や遺言書の閲覧を請求できる  ・ この関係相続人等には、    遺言による信託の受益者、帰属権利者、受託者、信託監督人、受益者代理人も含む   また、何人も、  ・ 遺言書保管事実証明書の交付請求可  ・ 遺言書の内容を知ることはできないが、  ・ 遺言書の存在を知ることができる   ※ 遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると、遺言書保管官は、他の相続    人等に対し、遺言書を保管している旨を通知することになっていることに注意 (4) 家庭裁判所の遺言書の検認手続が不要   従来の自筆証書遺言は、相続人などその遺言の効力を主張したり、遺言執行者におい  てその遺言を執行しようとする場合、家庭裁判所の検認という手続きを経ることが求め  られていました。   しかし、新制度である自筆証書遺言の保管制度を利用すれば、後の上記(3)の関係相続  人等は、公正証書遺言と同様に、遺言書の検認は不要になりました。5 今後期待される機能  自筆証書遺言の遺言書保管制度は、公正証書遺言の作成・保管に代わるものとして、そ れよりもより安価で、利用しやすいものとして機能することが期待される。  身近で利用しやすい遺言ということになります。6 最後に法務省のわかりやすい解説案内(PDF)を貼り付けておきます。                                   以上    

相続法改正その3(預貯金の払戻し)

1 従来の考え方・取扱い  遺産相続が生じ、遺産分割請求として事件が家庭裁判所に調停あるいは審判という形で 係属した場合、民法427条により法律上当然に分割されるところの可分債権ということ で、遺産分割の対象とはならないという考え方(最高裁判決H16.4.20)  ただし、家庭裁判所の実務では、相続人間の合意がある場合に限って遺産分割の対象に なるとされてきました。  上記最高裁の考え方からすると、銀行などにある被相続人の預金は、相続人の法定相続 分に従って当然に分割されたことになるので(これを当然分割という)、各相続人は、自 分の相続分に相当する金銭を上記銀行から下ろせるはずです。  ところが、銀行などの金融機関の実務では、遺産分割協議書などの相続人全員の合意が なければ、預金の払戻しには応じない対応がとられていました。  ここに、裁判所と銀行などの金融機関との間に齟齬が生じていたため、そのはざまで、 相続人たる市民の方々は困惑する状況がありました。  これを受けて、近時、最高裁(H28.12.19決定)は、預貯金さらには現金も含めて、これ らを相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないとして(従来の当然分 割の考え方を改め)、遺産分割の対象とする判断(判例変更)をしました。  その結果、被相続人の預貯金については、相続開始後、遺産分割前の払戻しは、共同相 続人全員の合意がなければできないという銀行実務に従うことになったわけです。2 相続人らにとって不都合な実態  被相続人が死亡後、同人の葬儀費用、お墓の手配、相続債務の支払いや相続税の支払い などの必要から被相続人の生前有していた現金や預貯金を下ろして使う必要が生じること があります。  しかし、上記1のような銀行実務から、肝心なときに被相続人の預金口座が相続開始を 知った銀行によっていわば凍結されて、共同相続人全員の合意を証する書面などがないと 払戻しには応じられない旨の対応を示されることになります。  親族や身寄りのない親類の相続を経験したことのある方であれば身をもって体験された こともあるのではないでしょうか。3 今回の法改正(2019年7月施行) (1) 預貯金の払戻し制度の創設   遺産に属する預貯金債権のうち、一定額について、共同相続人全員によらなくとも相  続人のうちの一人による単独での払戻しを認めるものとした。   単独で払戻しができる額=相続開始時の預貯金債権の額×法定相続分   ただし、1つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円まで (2) 家庭裁判所の保全処分(要件の緩和)   家事事件手続法を改正(家事事件手続法200条3項の新設)し、仮払いの必要性が  あると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の仮払  いの許可を得て、特定の預貯金債権の全部又はその一部を仮に取得させる形で利用でき  ることにした。   従来は、遺産分割の保全処分として、「強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫  の危険を防止するため必要あるとき」といった保全の必要性が厳格で、保全処分を利用  するハードルが高かったのが、緩和されたことになります。   しかし、家庭裁判所の上記保全処分を利用するには、本案事件として遺産分割手続の  申立てが当該裁判所に係属していることが依然として要件とされていることからする  と、利便度は、上記(1)に劣るとは思います。なぜなら、このような要件は、弁護士など  の専門家の代理人が付いていないと利用しにくいからです。 今後、改正後の頻繁な利用が期待されるのは、専門家に依頼することなく、相続人が単独でも利用できる(1)の制度となりましょう。                                      以上     

相続法改正その2(居住用不動産贈与等)

1 改正内容の概要(2019年7月施行)  これまで、被相続人(夫)が生前に、配偶者(妻)へ居住用不動産(例えば、現在同居 しているマンションなど)を贈与していたとすると、現行法では、相続が開始して遺産分 割の場になった際、遺産としての財産の算定において、生前贈与分である上記不動産も相 続財産とみなされて、配偶者は被相続人から遺産の前渡しを受けていたもの(これを「特 別受益」と言います)と取り扱われることになります。  ところが、今回の改正では、被相続人の意思の推定規定(持ち戻しの免除の意思)を設 けて、贈与された上記居住用不動産は、相続開始時の遺産である財産には含めない意思の もとに生前贈与されたものとして、原則として遺産の前渡しを受けたもの(特別受益)と して取り扱う必要がなく、結果として、配偶者は、居住用不動産を除いた遺産を2分の1 の相続分として遺産分割に臨むことができることになります。この点では、遺贈も同様で す。  そのため、婚姻期間が20年以上の夫婦間の居住用不動産の遺贈又は贈与がされた場合 については、原則として遺産分割における配偶者の取り分が増えることになる。2 具体的事例  相続人が配偶者と子2名で、遺産が、居住用不動産(評価額4000万円)のほかその他の財産として6000万円が存在するとします。  居住用不動産は、2分の1ずつ夫婦が共有していたと考えられるとすると、夫の持分である2分の1を居住用不動産についての贈与ないし遺贈が妻にあったとします。  そうすると、夫が亡くなったとき、相続が発生し、現行法と改正法では以下のようになります。(1) 現行法    妻である配偶者の取り分    居住用不動産2000万円(被相続人(夫)の持分2分の1)+6000万円=80   00万円    このほかに、生前贈与ないし遺贈にかかる居住用不動産2000万円(妻が夫から   受けた持分2分の1)も遺産に含めて計算されることになる。    その結果、遺産総額1億円で、配偶者(妻)の相続分は2分の1ゆえ、5000万   円、そのうち、既に2000万円分の贈与ないし遺贈による遺産の前渡しがあるの   で、あと3000万円分の取り分が同人にはあることになる。   最終的には、妻の取り分は5000万円になる。(2) 改正法    妻である配偶者の取り分    生前贈与分(遺贈分も同様)である上記2000万円は、相続財産とみなす必要が   なくなる。    その結果、居住用不動産2000万円(被相続人(夫)の持分2分の1)+6000   万円=8000万円が遺産の総額となる。    配偶者(妻)の取り分としては、    8000万円の2分の1ゆえ、4000万円分の取り分が同人にはあることにな   る。    最終的には、妻の取り分は生前贈与分ないし遺贈分も含めると6000万円にな   る。3 文章だけでは、イメージしにくいかもしれません。以下の法務省のウェブを参照してみ てください。上記2の事例を視覚化して説明しています。

自己破産における自由財産(の拡張)とは

 自然人が債務超過ないし支払不能に陥り、負っている債務の免責を得ることを主目的に裁判所へ破産の申立てをする。 破産を申し立てるにも、弁護士報酬を含め一定の費用がかかることは、当事務所ホームページ(http://trout-law.jp)のトピックス(破産・民事再生)の個人破産の項で説明したとおりです。 破産を申し立てる人の中には、自己破産したときに、今ある財産がすべて失われて返済にまわる、とか、銀行などの預貯金、あるいは手持ちの現金が。返済に充てられて全く使えなくなる、といった具合に、考えてしまう方が少なくありません。 しかし、それでは、せっかく破産、債務の免責を申し立てて経済的再生を図ろうとしても、その資金的きっかけがつかめず、再び他から借金をせざるを得なくなるなどして、負債を抱えたり支払不能を繰り返すことになりかねません。 このようなことのないように、破産法は、例え自己破産の申立てをしても、債権者への返済に充てるための破産財団を構成しない財産として、「自由財産」というものを認めています(破産法34条3項)。 破産者は、この自由財産の範囲で、当該財産を自由に管理処分できることから、生活を維持したり、破産・免責後の経済生活の再生のための便宜に充てることができることになります。 以下では、どのようなものが自由財産に該当し、破産者が自由に管理処分できる自由財産の範囲はどこまで認められるのかということについて、破産裁判所の実務に即して解説します。1 自由財産の定義  自由財産とは、破産者の財産のうち、破産財団に属せず、破産者が自由に管理処分できる財産をいいます。2 本来的自由財産 (1) 99万円以下の金銭(現金)(破産法34条3項1号,民事執行法131条3号,同法施行令1条による) (2) 差押禁止財産(民事執行法上のもののほか、特別法にも規定がある)の主なもの  ・ 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具  ・ 1か月間の生活に必要な食糧・燃料  ・ 農業・漁業従事者の農具、漁具  ・ 技術者等の業務上必要な器具類(大工道具、理容機具など)  ・ 給料・退職手当(原則4分の3相当分)、なお、中小企業、小規模企業の退職金共済は全額  ・ 民間の年金保険  ・ H3.3.31以前に効力が発生している簡易生命保険契約の保険金又は還付金請求権  ・ 各種保険給付受給権、高額療養費の支給、家族埋葬料の支給  ・ 生活保護受給権、失業等給付受給権、労働者の補償請求権、交通事故被害者の請求権  3 自由財産の拡張 (1) 預貯金   預金は、本来的な自由財産ではありませんが、現金に準じるものとして、一定の範囲で自由財産としての拡張が認められています。 (2) 年金   年金そのものは、差押禁止財産として本来的自由財産ですが、通常、隔月で指定の銀行口座などに振り込まれ、預金となります。こうして銀行預金となった後は、差押禁止財産ではなく、差押えが可能とされています。   年金振込分と合わせて99万円以下であれば自由財産の拡張の範囲内といえます。これが99万円を超える場合には、年金が破産者の今後の生活に不可欠であることを疎明して、自由財産の拡張を申し立てることになります。4 自由財産拡張の手続運用  自由財産拡張の可否(破産裁判所の判断)は、破産管財人の意見を聴いて判断されます。  裁判上の運用(例)  ア 99万円に満つるまでの現金  イ 残高が20万円以下の預貯金  ウ 見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金  エ 処分見込価額が20万円以下の自動車  オ 居住用家屋の敷金債権  カ 電話加入権  キ 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権(すなわち支給見込額が160万円以下の退職金)  ク 家財道具  ケ 差押えを禁止されている動産又は債権  上記財産について、同じ項目の財産が複数ある場合は、個々の財産の評価額を合計して得た額を当該項目における評価額とする。 CF. 東京地裁では、自由財産の総額が99万円以下となる場合は比較的緩やかに判断し、99万円を超える場合は慎重に判断される傾向があります。東京地裁においては、上記20万円というような基準の数字はないようです。5 まとめ  いずれにしても、上記のような自由財産を法が予定しているのは、破産者が真に経済的再生を遂げるために必要と考えられるからです。このような定めや運用がないとすると、破産を申し立てる者は、自己の財産状況を真摯に裁判所あるいは破産管財人に申告することが期待できなくなってしまいます。債務の免責後、一文無しから経済生活を始めることが現実的ではないことは明らかです。  それゆえ、破産を申し立てるときに、相談者は、破産申立てを依頼しようとしている弁護士に対しても、上記自由財産制度及び自由財産の拡張制度を十分に理解した上で、正直に自己の財産状態を打ち明けて申立ての相談をするようにしてください。    (文責弁護士福島政幸)       

企業(事業者)民事再生について

 裁判所を介した倒産手続には、大きく分けて、破産と民事再生がある(ここでは、特別清算や会社更生などの特殊・大規模な手続を除外して考察する。また、強制力のない任意整理や裁判所における特定調停もここでは割愛する。)。破産にも、自然人個人としての破産と事業者としての破産があるように、民事再生にも、個人再生事件と一般の民事再生事件とに分けて考察するのが分かり易いと思われる。個人民事再生は、民事再生法ができてから約1年後、小規模個人再生と給与所得者個人再生の各手続が、民事再生法の改正により加わり、2001年4月から施行されています。 個人事業者向けの個人再生手続については、別の機会に解説させていただくこととし、ここでは、一般の民事再生手続について説明したいと思います。 この民事再生は、個人、法人を問わず手続の利用が可能ですが、以下の点に留意が必要です。1 民事再生手続の開始の要件 ① 支払不能に陥るおそれがあること ② 事業の継続に著しい支障をきたすことなく、弁済期にある債務を弁済できないこと2 裁判所へ民事再生を申立てる準備において必要なこと ① 裁判所への予納金納付(負債5000万円未満が200万円、5000万円以上~1億円が300万円など)、他には弁護士に依頼する弁護士費用も準備が必要 ② 申立てから再生計画案の認可までには、約半年ほどかかるので、それを見込んだ事業のための資金繰り計画が必要とされること(向こう6か月間の資金繰り予測) ③ 申立て前に当面の運転資金の用意が必要 ④ 裁判所への申立てに当たって、再生手続に乗せることのできる事案かそうではなく破産手続によらなければならない事案かを見きわめるために(すなわち、再生手続開始の要件にかかわるものとして)求められる書類資料として、収益予測による黒字かどうかということ  ア 申立日前1年間の資金繰り表及び直近3期分の貸借対照表及び損益計算書  イ 上記②のような申立日後6か月間の資金繰り表  ウ 日繰りのシュミレーション ⑤ 保全処分を併せて申し立てる必要の有無   弁済禁止、担保提供禁止の保全処分、不動産の処分禁止、借財禁止の仮処分など3 再生計画案における債務圧縮の目安(再生計画案の作成において必要となる)  一般的には、民事再生手続で、負債総額の3割以下とされ、平均的には1割程度の支払いを5年間ないし7年間くらいの範囲で分割で支払う計画案を作成するイメージ 1) 計画案で圧縮する負債支払額は、清算価値(その企業が破産した場合の換価による配当対象財産額=配当率)以上でなければならないこと 2) 弁済期間は、法文上は10年を超えない期間とされているが、上記のように標準的には5年ないし7年くらいまで 3) 負債増額に比した再生計画案における支払総額、すなわち、弁済率については、特に法文上上限があるわけではない(下限は、上記1)のとおり)が、実務上30パーセント未満、1割~2割程度で、一番多いのは1割程度の支払と思われる。 4) 最終的には、再生計画案が、債権者によって可決されるかどうかにかかっている。    総債権額の過半数、かつ、債権者数(頭数)の半数以上の賛成によって可決される必要    その上で、裁判所が選任した監督委員(破産の管財人と同様に弁護士が選任される)による意見書と併せて再生手続を担当する裁判所(通常は裁判官3人の合議体)が、再生計画案を認可することになる。4 再生計画案が認可された後について 1)再生計画案の実行   再生債務者は確定した再生計画に従って、速やかにその内容を遂行し、監督委員が再生計画の 実行を監督します。 2)再生手続の終結   再生計画の履行が完了したときまたは再生計画認可決定確定後3年間経過時に再生手続は終結する。   それまでの間は、定期的に(通常は、6か月おきくらい)監督委員による再生計画の履行監督に服することになります。そのため、定期的な報告書を裁判所と監督委員に提出し、再生手続中に、再生債務者が、重要な財産の処分及び譲受け・多額の借財・別除権の目的である財産の受戻しなどをする場合、監督委員の履行監督に服することになります。                               以上(文責 弁護士福島政幸)    

非正規雇用者の雇用管理(パート、アルバイト、契約社員中心に)

 事業者の中には、正規雇用だと労働基準法などのいろいろな規制がかかって労務管理が大変で、やれ残業代、休日手当、深夜労働だの、あるいは有給休暇とか育児休業など、さらには社会保険の加入・管理などと面倒なので、非正規雇用で従業員を賄う方が効率的だと考えている人も少なくありません。 しかし、必ずしもそうではないことを理解してもらう必要があります。以下に整理してみます。1 非正規雇用者についてのバリエーション  パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣社員などが考えられます。  法律上の定義としては、「短時間労働者」には、パートタイマー、アルバイトが含まれる。  【契約社員】とよく表現されますが、これは法的概念ではなく、正規社員とは異なる期間の定め  のある社員として認識されています。2 法律の規程  上記1のようにパートタイマー(以下では、アルバイトも含むものとする。「パート」と称す る)については、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」=いわゆる「パート労働法」 が存在します。  派遣社員については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法 律」が存在します。  契約社員については、上記のような単行法は存在しておらず、「労働契約法」という労働基準法 と並ぶいわゆる労働法の基本法の中で、「期間の定めのある労働契約」として定義・規定されてい ます(労働契約法第四章)。3 非正規雇用者の労務管理についての考え方 (1) 契約形態の整理   非正規雇用者にも上記のようにいろいろなバリエーションがあり、その法的規制は錯綜気味で  す。   整理してみると、① 正規労働者のようにフルタイムで働く人(とそうではない人)           ② 正規労働者のように期間の定めのない契約である人(とない人)  といった具合に、① 働く時間を軸に、②のように雇用期間を軸に、労働者の種類を分類整理で きると思います。   ①ではパート(バイト)が除かれ、有期契約社員とか派遣労働者が対象となると思われます。   ②では、有期契約社員は除かれ、パートには、契約期間の定めのある人とない人がいて、後者  が対象になることになります。 (2) 労働基本法(労働契約法、労働基準法など)の適用   基本的には、正規雇用者だけではなく、非正規雇用者にも労働基本法の適用(ここでは紙面に限りがあるので、労働安全衛生については下記5(2)の定期健診以外は割愛します。)はあるのだと理解しておくことが肝要です。そして、例外・除外あるいは特別規定が非正規雇用に及ぶと。具体的には、以下のとおりです。  a 賃金管理面    最低賃金法による時間当たりの最低賃金(時間単価)は、非正規雇用者にも適用されます。    賞与、昇給などは、非正規雇用には、任意適用となります。    諸手当関係;近時の判例などからは、正規雇用者と非正規雇用者との間で、差を設けることには慎重さと注意が必要です。今日日(きょうび)の同一労働同一賃金の法規制の及ぶことが考えられます。別の記事にある最高裁判例(ハマキョウレックス事件及び長澤運輸事件)を参照してください。     b 労働時間管理面    労基法にある時間外労働、休日労働及び深夜勤務について    1日8時間、1週40時間を超えた勤務、午後10時以降翌日午前5時までの勤務については、いうまでもなく、非正規雇用者にも適用され、法規に従った時間外手当を支給しなければなりません。ただ、パートのような短時間労働者の場合、契約所定労働時間(例えば、5時間)を超えて勤務した場合でも、8時間以内であれば、割増賃金(1.25倍)を支払う必要はなく(週40時間以内も同様)、通常の時間単価を払えば済むことになります。アルバイトで、コンビニの深夜勤務のみのような場合、雇用契約内容にもよりますが、日勤の基準単価がある場合には、深夜勤務割増単価を設定すべきですし、日勤がない場合にも、他のアルバイト従業員で日勤の基準単価がある場合は、やはりそれに割増(1.25倍)した単価設定することが望ましいといえます。    休憩について    基本的には労基法34条のとおり。1日6時間超えて勤務なら45分、8時間超えなら1時間の休憩を設ける必要があります。    逆に、短時間労働者の場合、厳密には、上記規制にかからないとしても、他の従業員と同様に昼休みなどは同様に設けることが望ましい。  c 年次有給休暇(労働基準法39条)    有期の契約社員であっても、雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上勤務した人には、正規従業員と同様な年休付与義務があります。    パート(バイト)の従業員への年休付与について    共通条件;決められた労働日数の8割以上勤務+6か月間継続勤務 は上記と同じ    1)週5日又は週30時間以上なら正規従業員と同様の年休付与日数義務が当てはまる。    2)それ以外の週5日未満、週30時間未満の場合 下表のとおり継続勤務年数が     6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上       週5日:年217日以上   10     11   12   14   16   18   20  日  4日: 169~216日     7       8     9   10    12   13   15  3日: 121~168日    5             6             6            8             9           10           11      2日:   73~120日         3             4             4            5             6             6             7      1日:  48~  72日    1              2             2            2             3             3             3  d 解雇、解雇予告手当    期間の定めのない社員は、労契法16条による解雇制限(正規社員とほぼ同様)    それゆえ、パート従業員であっても、期間のさだめなく契約しているときには、解雇権濫用法理に服することになる。    有期契約社員は、期間の定めによるが、契約期間中の解雇は、労契法17条で、「やむを得ない事由」が要求される。また、同法18条による無期労働契約への転換、同法19条による更新の繰り返しの規制(日立メディコ、東芝柳井事件の最高裁判例を明文化したもの)に服する。    パート・バイトであっても、解雇は30日前に、そうでない場合は、30日分の解雇予告手当の支給必要となります(労基法20条)。 (3) 就業規則について   パートを常時10人以上雇っている事業者は、パートに適用される就業規則(「短時間労働者就業規則」)を作成する必要がある(パート労働法の下位規範であるパート指針から)。   企業によっては、期間の定めある契約社員について「有期従業員就業規則」を制定し、そこで、上記労契法17~19条に関係する規律を整理して規程ているところもあり、それが望ましいと思います。 (4) 育児休暇(育児休業給付)・介護休暇について   いわゆる「育児・介護休業法」(「育児休業、介護休業等・・労働者の福祉に関する法律」)が存在します。   この法律は、パートなどの短時間労働者、契約社員などの有期労働者の区別なく、「一定範囲期間雇用者」にも適用対象になるとされています。   条件としては、雇用期間が1年以上、子が1歳に達する日を超えて引続き雇用されること         (子が1歳に達する日から1年以内に期間満了、更新されないときは除く)   半年契約や3か月契約であっても、契約更新により上記に当てはまれば同様   介護休暇の場合、対象者:配偶者、父母・子、配偶者の父母           日数 :93日を限度とする。   日々雇用される者、期間の定めある者、パートで期間の定めのない者や契約更新繰り返した者であっても、雇用期間1年以上、休業予定日から93日超えて引続き雇用される場合は対象となります。(ただし、93日経過日から1年経過する日までに契約更新ないときは除く)4 社会保険、雇用保険について (1) 健康保険と厚生年金保険については、パートも下記条件を満たせば加入が可能 1) 全ての法人事務所、従業員5人以上の個人事務所(ただし、農、畜、水、林業及びサービス業を除く) 2) 契約期間2か月以上かつフルタイムの4分の3時間以上勤務 (2) 雇用保険   雇用保険には、a 一般被保険者とb 短時間労働被保険者の2種類がある。   週30時間以上のパートであれば、aの一般被保険者となる。   週30時間未満であっても、1週間に20時間以上連続して1年以上雇用見込なら、bの短時間労働被保険者となる。   雇用保険の給付条件:   a 一般被保険者の場合、離職日前1年間に14日以上は働いた月が6か月以上かつ雇用保険加入期間6か月以上   b 短時間労働被保険者の場合、離職日前2年間に11日以上働いた月が12か月以上かつ雇用保険加入期間12か月以上5 その他 (1) 正社員以外の深夜労働(妊婦が時間外・休日・深夜労働を禁止されていることに関連して)   深夜労働の免除(労基法66条)   育児・介護をする者についても、一定の場合免除されることがある。小学校入学前の子を育てている場合とか、要介護家族がいる場合   深夜労働の免除を得るには、免除開始日1か月前に申請する。1回につき、1か月以上6か月以内で、回数は制限がない。 (2) 労災   労働安全衛生法66条で定期健康診断の事業者への義務付け   1年に1回、有害業務従事者には、半年に1回   ① 常時雇用されているパート(期間の定めない者、期間定めあっても更新1年以上あるいはその予定の者)   ② フルタイム社員の1週間労働時間の4分の3以上勤務  の条件を満たしていれば、健診対象となる。                                         以 上           

日本郵便の期間雇用社員(満65歳)の契約更新

最高裁平成30年9月14日の判決(原審:東京高裁)1 事案の概要  日本郵便(被上告人)は、有期雇用社員就業規則(10条2項)で、「会社の都合による特別の場合のほかは、満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後、雇用契約を更新しない。」(本件上限条項)と定めている。  日本郵便においては、正社員の定年は60歳とし、定年退職後に継続して就労する者について、高齢再雇用社員就業規則に基づき、雇用期間を1年として再雇用(高齢再雇用社員)し、これを更新することとしている。同規則は、高齢再雇用社員について、満65歳に達した日以後の最初の3月31日が到来したときには有期労働契約の更新を行わない旨定めている。  原審(東京高裁)の判断  日本郵政における期間雇用社員の契約更新手続は形骸化しており、実質的に無期労働契約と同視し得る状態。この点では、解雇事由がなく、期間満了による雇止め(本件雇止め)は無効。  本件上限条項は、旧公社当時の労働条件変更につき合理性があり、これによると、本件雇止めは適法(有効)。2 最高裁判断の要点 (1) 原審は、本件上限条項を就業規則の不利益変更として捉えているが、旧公社当時の労働条件は日本郵便には引き継がれておらず、同条項は旧公社当時の労働条件の不利益変更に当たらない。 (2) 本件上限条項は、有効に労働契約法7条による労働契約の内容になっており、各有期労働契約は、本件各雇止めの時点において、各有期労働契約者において期間満了後もその雇用関係が係属されるものとする期待に合理的理由がなく、実質的に無期労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。 (3) 結論として、本件各雇止めは適法であり、本件各有期労働契約は期間満了により終了した。3 解説  本件最高裁判決は、結論としては、本件各雇止めは適法かつ有効であるとして、原審同様に、各有期労働契約による従業員からの労働契約上の地位確認及び雇止め後の賃金の支払い等の請求を棄却したが、その結論を導出する過程における判断において、原審には、法令の解釈適用を誤った違法があるとした。  ポイントは、原審は、本件雇止めが解雇に関する法理の類推によれば無効になるとし、本件上限条項に基づく更新拒否の適否の問題は、解雇に関する法理の類推により本件各雇止めが無効になるか否かとは別の契約終了事由に関する問題として捉えるべきとしているが、最高裁は、正社員が定年に達したことが無期労働契約の終了事由になるのとは異なり、上告人ら(有期雇用者)が本件各有期労働契約の期間満了時において満65歳に達していることは、本件各雇止めの理由にすぎず、本件各有期労働契約の独立の終了事由には当たらないとしている。       

ユニオンから団交(団体交渉)の申入れがあったら

 事業者に宛てて、合同労組である企業外組合(いわゆるユニオン)から「解雇について」とか「未払賃金について」など、団体交渉の申入れが文書でくることに出くわした場合について、事業者がどう対処すべきかについて、以下に若干の解説をしておきます。1 まず、申入れのあったユニオンが、労働組合法上の労組であるかどうか (1) 労働組合性   事業者は、正規の労組ではないところに、団交に応じる義務はありません。逆に、労働組合法  上の労組に対しては、事業者は、誠実交渉義務を負うことになります。  このような労組への団交を拒否すると、事業者は、労働組合法の不当労働行為(労組法7条)の 責任を問われることになってしまいます。さらに、そのような対応は、民法上は不法行為を構成す る可能性もあります。  ですから、上記のような義務を負うかどうかの前提として、正式な労働組合かどうかを見極める 必要があります。 (2) 申入れのあったユニオンの性質   どのような組合か。代表者はどのような人物(経歴、有資格)か。2 ユニオンへの返答書面(応答)の前提 (1) ユニオンが要求してきている団交事項について  ア まず、誰についての団交か。現に在籍している従業員か、それとも会社を退職した元従業員   についてか。その(元)従業員は、正規雇用者か、非正規雇用者か。非正規雇用者であれば、   有期従業員、継続雇用者、アルバイト・パート従業員、派遣労働者などのうちのいずれの労働   者か。    要するに、自社に関連する(元)従業員でなければ、団交に応じる義務は生じてこないはず   です。(元)従業員でも、非正規雇用で、例えば、派遣労働者の場合、団交事項が派遣先であ   る自社の勤務条件(労働条件)に関する事項かどうか、派遣元で給与計算支給をしている場合   で賃金事項が対象であれば、派遣先である自社が団体交渉の対象ではないことも考えられる。  イ 団交事項    解雇なら解雇事由、解雇の正当性をリサーチしておく。    残業代請求ならタイムカード等の対象となる従業員の勤休管理資料の検索    退職金なら退職金支給資料    共通するものとして、かつ、団交時に開示を求めてくる情報との関係で、就業規則、その一   部である賃金規程、退職金規程など  ウ 団交事項について、団交への出席者で打合せをしておく必要 (2) 要求事項について、どこまで応じることが可能か(検討・吟味) (3) 団交場所の選定 (4) 交渉時間 (5) 出席者(会社側、組合側)3 返答書面の起案4 団交期日(回数を含めて)・日程5 合意局面あるいは交渉決裂局面(不当労働行為にならない対応) 以上のように、対応には、経験とノウハウがある程度必要であり、事業者だけで交渉に当たる場合には、団交を何度も経験実施してきているユニオン側のイニシアチブで団交が進められてしまう 懸念があります。 団交の申し入れがあったら、労働関係に明るい弁護士(事務所)に相談するのが安心かつ確実な対応といえましょう。 当トラウト法律事務所は、このような労働問題を専門に扱っている弁護士事務所です。 どうか気軽にご相談ください。貴社の事務所への出張相談にも応じております。   以 上