日本郵便の期間雇用社員(満65歳)の契約更新

最高裁平成30年9月14日の判決(原審:東京高裁)

1 事案の概要

  日本郵便(被上告人)は、有期雇用社員就業規則(10条2項)で、「会社の都合による特別の場合のほかは、満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後、雇用契約を更新しない。」(本件上限条項)と定めている。

  日本郵便においては、正社員の定年は60歳とし、定年退職後に継続して就労する者について、高齢再雇用社員就業規則に基づき、雇用期間を1年として再雇用(高齢再雇用社員)し、これを更新することとしている。同規則は、高齢再雇用社員について、満65歳に達した日以後の最初の3月31日が到来したときには有期労働契約の更新を行わない旨定めている。

  原審(東京高裁)の判断

  日本郵政における期間雇用社員の契約更新手続は形骸化しており、実質的に無期労働契約と同視し得る状態。この点では、解雇事由がなく、期間満了による雇止め(本件雇止め)は無効。

  本件上限条項は、旧公社当時の労働条件変更につき合理性があり、これによると、本件雇止めは適法(有効)。

2 最高裁判断の要点

 (1) 原審は、本件上限条項を就業規則の不利益変更として捉えているが、旧公社当時の労働条件は日本郵便には引き継がれておらず、同条項は旧公社当時の労働条件の不利益変更に当たらない。

 (2) 本件上限条項は、有効に労働契約法7条による労働契約の内容になっており、各有期労働契約は、本件各雇止めの時点において、各有期労働契約者において期間満了後もその雇用関係が係属されるものとする期待に合理的理由がなく、実質的に無期労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。

 (3) 結論として、本件各雇止めは適法であり、本件各有期労働契約は期間満了により終了した。

3 解説

  本件最高裁判決は、結論としては、本件各雇止めは適法かつ有効であるとして、原審同様に、各有期労働契約による従業員からの労働契約上の地位確認及び雇止め後の賃金の支払い等の請求を棄却したが、その結論を導出する過程における判断において、原審には、法令の解釈適用を誤った違法があるとした。

  ポイントは、原審は、本件雇止めが解雇に関する法理の類推によれば無効になるとし、本件上限条項に基づく更新拒否の適否の問題は、解雇に関する法理の類推により本件各雇止めが無効になるか否かとは別の契約終了事由に関する問題として捉えるべきとしているが、最高裁は、正社員が定年に達したことが無期労働契約の終了事由になるのとは異なり、上告人ら(有期雇用者)が本件各有期労働契約の期間満了時において満65歳に達していることは、本件各雇止めの理由にすぎず、本件各有期労働契約の独立の終了事由には当たらないとしている。

   

  

  

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