ハマキョウレックス事件について

平成30年6月1日、最高裁が上記事件についての上告審判断を示した。

【事案】

 期間の定めのある有期労働契約者(契約社員・トラック運転手)(被上告人)期間の定めのない無期労働契約者との労働条件のうち、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、定期昇給及び退職金に相違があることは労働契約法20条に違反しているとして、

(1) 労働条件につき。正社員(無期労働契約者)と同一の権利を有する地位にあることの確認、

(2) 主位的に、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当及び通勤手当(以下「本件諸
 手当」)についてのH21.10.1~H27.11.30までの間のこれら手当についての差額の支払請求、

(3) 予備的に、不法行為に基づき、上記差額に相当する額の損害賠償請求をした。

【裁判経過】

 原審である大阪高等裁判所は、無事故手当(月1万円)、作業手当(月1~2万円)、給食手当(月3500円)、通勤手当(正社員と契約社員間に月2000円の支給額に差があったが後に解消)、家族手当については、契約社員には支給規定が存在しないことを前提に、(1)の確認請求及び(2)本件賃金差額請求の全部並びに(3)本件損害賠償請求のうち住宅手当及び皆勤手当に係る部分をいずれも棄却し、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の正社員との差額分について損害賠償請求を認容した。

 大阪高裁の判断理由は、(1)及び(2)については、契約社員である被上告人と正社員との間で本件賃金等に相違があることが労契法20条に違反するとしても、被上告人の労働条件が正社員と同一になるものではないから、いずれも理由がない。(3)については、被上告人と正社員との間の住宅手当及び皆勤手当にかかる相違は不合理と認められるに当たらないから、労契法20条に違反しないとしている。

【今回の最高裁判断】

第1 契約社員である附帯上告人(被上告人)の請求(主張)について

 1 被上告人は、原審で棄却された部分を附帯上告している。

 2 本判決は、基本的には、不法行為以外の上記(1)、(2)についての大阪高裁の判断を維持し、(3)
  の住居手当も、正社員と契約社員では就業場所変更の予定、転居に伴う配転予定の有無に差があ
  ることから正社員にのみ住宅手当を支給していることは不合理とは言えないとして、原審判断を
  維持したが、皆勤手当については、同じトラック運転手でありながら、正社員と契約社員で職務
  の内容に差が生ずるものではないことを主たる理由に、正社員にのみ皆勤手当を支給するのは不
  合理であるとして、原審判断を破棄してこの部分について被上告人が皆勤手当の支給要件を満た
  しているか否か等について更に審理を尽くさせるために原審差し戻しを命じた。

第2 上告人の請求(主張)について

 1 上告人は、原審が、契約社員と正社員の無事故手当、作業手当、給食手当及び通勤手当に係る
  相違が不合理で、労契法20条適用された平成25年4月1日以降の相違は不法行為に当たるとし
  て損害賠償請求を認容したものを不服として上告している。

 2 本判決は、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の契約社員と正社員との相違はいずれ
  も不合理であること、労契法20条に違反すること、不法行為に当たることから、差額相当額の
  損害賠償請求を認容した原審判断は正当であるとして、上告を棄却した。

【解説】(最高裁判断で実務上特に重要と思われる点)

1 有期労働者と無期労働者との労働条件の相違が労契法20条に違反するとしても、同条の効力に
 より有期労働者の労働条件が無期労働者のそれと同一のものとなるものではないこと

2 上記1を理由として、被上告人が本件賃金等に関し、正社員と同一の権利を有する地位にあるこ
 との確認請求を棄却していること

3 同様に、同一の権利を有する地位にあることを前提とした被上告人の本件差額賃金請求も棄却し
 ていること

4 各種手当のうち、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当及び皆勤手当について、契約社員
 と正社員との間に相違を設けることは不合理であり、労契法20条に違反するものであること

5 上記4を理由として、不法行為を構成し、その差額(ただし、H25.4.1以降分のみ)について損害
 賠償請求が成り立つこと

  


 

 

 


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