成年後見人等の実務
留意点の整理
1 成年後見の申立て
① 申立てには、本人の子が最も多く、次いで市区町村長、親族(内訳;配偶者、親、兄 弟姉妹、その他4親等内親族)の順で、自治体の長による申立てが結構多い印象を受ける。
② 申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約が最も多く、次いで身上監護、介護保険契約、不動産の処分等。
③ 申立てに伴う面接には、原則、申立人、本人及び後見人等候補者が同席するが、本人が裁判所に来られない場合には、申立てに当たり、報告書で事情を説明しておけば、本人調査不要と裁判所で判断されることが多い。
2 鑑定をするかどうか、費用はいくらかなど
① 現状、鑑定を実施する確率は10パーセント以下(1割弱)
② 鑑定期間は、1か月程度
③ 鑑定費用は、5万~10万円
④ そのような場合に鑑定が必要とされるか。
主治医の診断書だけでは、後見開始の事由が確定できない場合(保佐あるいは補助との区別がつかないなど)が考えられる。
3 申立てから開始決定までの審理期間
鑑定がなければ、2か月以内がほとんど、書類がそろっていれば1か月程度
鑑定があると3か月くらいになる
4 後見人候補者
① 候補者には、親族後見人と専門職後見人の2種類
選任された後見人と本人との関係でみると、約30パーセント弱が親族後見人で、親族以外の第三者が70パーセント強
パターンとして考えられるのは、
1)身上監護が中心で、本人の財産管理の必要がない場合には、親族後見人の選任に、その中でも、親族間の問題などがあって、特定の親族を後見人にすると紛争を招くなどの事情がある場合には、第三者後見人のうちでも社会福祉士、社会福祉協議会、精神保健福祉士、市民後見人
2)一定の財産があって管理の必要があれば、第三者後見人に、その中で、親族間やその他の者との紛争のある事案や、管理すべき財産額が大きいなどの事情があれば弁護士が後見人に選任されやすいと思われる。
3) 専門職後見人には、弁護士のほか、司法書士、税理士、行政書士とこれらの各法人が主な内訳のよう
② 申立人から委任を受けた代理人弁護士が、自薦で後見人候補者を申し出たとしても、必ずしも後見人に選任されるとは限らないことに注意
しかも、弁護士会に団体推薦の名簿登載がない弁護士は、専門職扱いがなく、一般的に親族後見人と同じ扱いとなる。
5 後見監督人が付される場合とは
① 親族後見人の場合で、流動資産が500万円以上
② 専門職後見人の場合で、流動資産が相当額以上
6 後見人に選任後
① 後見開始及び後見人選任の審判が出た場合
法務局への登記(家裁の職権でなされる)に確定後2週間程度かかる
後見人が、本人の預貯金を早く管理したい場合(親族におろされてしまう危険回避など)、登記を待たず、審判確定証明書(家裁からすぐとれる)と審判書でもって、金融機関へ行き、対象財産を管理することに
② 就任後の初動業務と初回報告に注意
初動の中心は、金融機関に対する後見人就任届出
初回報告は審判後2か月以内なので、かなり忙しい
③ 定期報告(裁判所へは1年毎、監督人には適宜)
裁判所への報告書の提出期限を徒過すると、調査人を付けられるので留意
7 終了時の実務(報告と引き継ぎ)
8 その他留意事項
① 東京家裁の書式が必ずしも他の家裁で受け入れられるとは限らない。申立てる各家裁へ事前確認が必要
② 弁護士が申立て代理人兼候補者となる場合(いわゆる「自薦」)、必ずしも後見人に自分が選ばれるわけではないことを申立人(依頼者)に説明しておく必要、特に本人の財産について紛争がある場合などはリスクが高い。
③ 現金、預貯金の管理を、弁護士の預り金口座で行うことはしない。
④ 身上監護について
1)介護サービス入れてサポートするためには、介護認定受けて、介護保険によるサービス利用が現実的、親族や本人がこれを嫌ったり拒否する場合もある。説得、説明が必要。
2)被後見人である本人との面会は、ケースバイケース。
3)施設入所の際、連帯保証人にはならない。身元引受や保証人の要請をされたら?制度的な手当てが必要か。組織のバックアップなり、保証については、施設への支払滞納などしないことを説明して納得してもらうよう努力してみる。
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